副社長は花嫁教育にご執心
「……あれからまだひと月も経ってないのに、すごい昔のことみたいですね」
「そうだな。でもそれにしては、俺たちなかなか夫婦らしくなったと思わないか?」
「ふふ、そうですね」
美味しい料理に、美味しいお酒。窓からは、聖なる夜を彩る美しい夜景。最愛の旦那様と振り返る、私たちの出会い。
ああ、こんなに幸せなクリスマスって、大人になってからは初めてだ。
適度に酔いも回って、この上なく上機嫌の私。そして、そんな私を微笑ましそうに見つめる灯也さん。
もしも今のシーンを写真に撮ったなら、“理想の夫婦”というタイトルで額に入れて飾っておきたくなるような、本当に平和な時間だった。
そうしてお皿の料理はほとんど空になり、食器を洗うためキッチンに立った私についてきた彼が、ぴたりと背中に寄り添って私の肩に頭をもたれさせる。
仕事中は絶対に見られない、彼のこういう甘えたしぐさも、私は結構好きだったりする。
「どうしたんですか? 疲れました? それとも、飲み過ぎ?」
「……いや、どっちでもない」
「じゃあ、お皿とフォークを用意してもらっていいですか? これ洗い終わったら、お待ちかねのケーキを出しますから」