副社長は花嫁教育にご執心


……ただ、ひとつだけ言わせてください。もちろん、差し上げることは構わないんですけど……。

「あの、私、そういうこと、なにも知らなくて……」

「いいよ。一から全部教えてやる」

教える……そ、それは文字通り、手取り足取りですよね……?

何も知らないくせに妄想だけは先走って、頭から湯気が出そうになった。

ああ、私もとうとう夫婦の営みというものを知ることになるんだ……。


王子様がお姫様をエスコートするように、灯也さんに手を取られて寝室に移動すると、ふたり並んでベッドに腰掛けた。

彼の手が耳の脇に添えられ、一度軽いキスをされたところで、私は照れ隠しに彼に話しかけてみる。

「灯也さんって、なにごとも“教える”のが好きですよね?」

「ああ。まつりに対しては特にな。でも、その甲斐あってか、まつり、どんどん俺好みになってるよ」

甘すぎる微笑で頬をそっと撫でられ、緊張とドキドキが、さらに高まる。

彼好みになったと褒められるのは素直に嬉しいのだけど、状況が状況だから、つい“この後どうなるの”といっぱいいっぱいになって、うまい返しが思いつかない。

「あ……ありがとうございます」

なんとかお礼は言ったけど、そのぎこちなさを灯也さんがふっと笑う。


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