副社長は花嫁教育にご執心


これが、“心は後から追いついてくる”ってやつなのかな……。ぼんやりとそんなことを思いながら、ズボンのベルトを外す彼を見ていた。

「優しくするけど、痛いかもしれない。その時はちゃんと言って?」

「は、はい……わかりました」

コクコク頷いた私にふっと微笑んで、灯也さんがぐっと腰を進めた。

「わ」

なになになになに、この、未知の感覚……。ぎゅうぎゅうで、苦しい。けど。

「やっぱきついな……痛い?」

「平気、です……」

「じゃあ動かすよ? さっきと同じで、気持ちよかったら声出していいから」

なにかの先生みたいに、ひとつひとつやり方を説明されながら、それがうまくできたときにはご褒美にキスをくれる灯也さん。

私だけでなく、彼の方も“気持ちいい”の言葉の代わりに、ときおり吐息交じりの色っぽい声を漏らしていて、その余裕のない様子がとても愛しく思えた。

「灯也さん、好き。大好き」

昂った気持ちをそのまま声に出したら、「ああもうばか」となぜか怒られて、それから耳元に触れた唇がささやく。

「俺の方が、絶対好きだよ。……愛してる、まつり」

うそです! 私の方が! とムキになって言い返すより先に、彼が激しく身体を揺さぶるので、私はもう何が何だか分からなくって、頭が真っ白になった。

その状態がどういうことなのかを“灯也先生”があとで教えてくれて、なんだか自分がすごくふしだらになってしまったみたいで恥ずかしかったけれど。

二人で過ごした、初めてのクリスマスの夜。

夫婦で抱き合うことの喜びを、身をもって味わった、とても幸福な時間だった。




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