副社長は花嫁教育にご執心
第八章
スキャンダルに乱れる心
年末の繁忙期を過ぎ、お正月休みがやってきた。
サービス業はお正月も休みなしだと思われがちだけど、支配人の灯也さんのはからいでCrystal Oceanは今年から、元日から五日までを休業することにしている。
営業すれば当然それなりのお客さんは集まり売上げが見込めるのだけど、正月くらい従業員を休ませてやりたいと、灯也さんが役員会で意見したそうだ。
それではお客様のためにならない、と顔をしかめた役員もいたようだけど、灯也さんはこう言って説き伏せたのだとか。
『今、日本を引っ張る企業の多くがこのような決断をしています。長時間働くことを美徳とするのは、悪しき慣習。人手不足にあえぐこの時代に人材を確保したいのなら、わが社も従業員を守るような、働き方改革を進める必要があるのではないでしょうか』
それから反対する人はいなくなり、グループ全体で積極的に休みを取る方向へと動き出した。
もちろんすべての社員が、というわけにはいかないけれど、大多数の社員が無事にお正月休みを取れることとなった。