副社長は花嫁教育にご執心


「改めて、新年あけましておめでとう。さっそくだが、きみら夫婦二組を招いたのには、ちょっと理由がある」

なんだろう、理由って……。私はそう思いながら、テーブルの向こうをちらりと見やる。

四十代くらいと思われる男性は、身長はそれほど高くなさそうだけど、小太りの体格で肌ツヤがいい。針を刺したら破裂しそうにパンパンで、風船を彷彿とさせる。

女性の方も同じくらいの年代で、こちらは細身の、吊り目が印象深いとても綺麗な方だ。

「実は、例の土地のことなんだがね。設楽くんに売ろうか、それともこちらの三井くんに売ろうか、考えあぐねているところなんだ」

……と、土地? いったい、何の話? キョトンと首を傾げる私の横で、灯也さんが初めて口を開いた。

「ちょっと待ってください会長。あの土地は、。Crystal Oceanの拡大のためにもともとこちらに売ってもらう約束だったはずです。今日も、そのリニューアル工事について会長にご相談したくて……」

「ああ、そうなんだが……こちらの、三井(みつい)くんにも熱心に口説かれてしまってね。自分の方があの土地を有効利用できる。設楽に売ってしまうのはもったいないと」


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