副社長は花嫁教育にご執心


「わたくし、雑誌社に勤めているのですけれど……去年、こんな写真を手に入れまして」

テーブルに身を乗り出した綾子さんが、私と灯也さんの前にまず一枚写真を置く。

薄暗くて見にくいけれど、どこかのバーカウンターのようだ。そして、ひとりの男性の後ろ姿。

……これは、灯也さん? ぼんやりとした背格好しかわからないけれど、妻の勘とでもいうのか、写っているのは灯也さんだとほぼ確信した。

「そして、これと……最後が、これです」

綾子さんは言いながら、一枚目の写真の隣に、続けて二枚の写真を置いた。

二枚目は、さっきはカウンターに一人だった灯也さんらしき男性の隣に、女性の姿が加わっている。

体にぴたっとフィットした服を着ていて、とてもグラマラスで……隣の男性と言葉を交わしているような、そんな写真。

……なんだか、とてつもなく嫌な予感がしてならない。

そのまま三枚目に視線を移動させた私は、息を呑んだ。

女性は男性に腕を絡め、甘えるような色っぽい顔をしている。男性の方は顔が見えないけれど、写真からはとにかく親密そうな雰囲気が漂っていた。

これは……いつ、どこで撮られたものなの? そもそも、この男性は、本当に灯也さんなの?


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