副社長は花嫁教育にご執心
確かなことはなにもわからないのに、胸がぎゅうっと痛くなった。
やだ。彼を疑いたくなんてないのに……。灯也さんは、うつむき気味の私の肩にぽんと手を置く。
「まつり……これは誤解。大丈夫だから」
そう、ですよね……。灯也さんは、私を裏切るようなことをする人じゃない。
じぶんに言い聞かせていると、正面から私たちを嘲笑うような声がした。
「別に、奥様がこの写真を見てどう思うかってことは問題じゃないのよ? でもね、これが実際に週刊誌に載ったとしたら、世間はどう思うかしら? そして、設楽さん。あなたを可愛がってくれていた黒川会長は、どう思うかしら?」
その言葉に、灯也さんはハッとしたように黒川会長の方を見た。会長は、渋い顔で腕組みをしていた。
「まさか、会長……こんな写真ひとつで俺を信頼できなくなっているんですか?」
黙っている会長の代わりに、綾子さんが冷たい笑みを浮かべながら言う。
「話は最後までお聞きくださいね。会長がお悩みになる理由は、なにも写真だけじゃないのよ?」
そして、またしてもハンドバッグに手を突っ込んだ綾子さん。今度は何が出てくるのかとハラハラしながら見守る。