副社長は花嫁教育にご執心
「灯也さん……」
「でも、写真も録音も真実が捻じ曲げられてる。……どうしたら、それを信じてくださいますか?」
切実な瞳で訴える灯也さん。でも、会長は難しい顔で口を引き結んでしまって答えてくれない。
その様子をにやにやしながら眺めていた三井さんが、灯也さんに向かって言う。
「さっきも綾子が言っただろう。問題は、真実なんかじゃない。これが実際に雑誌に載って、世間がどう思うかだ。綾子はもちろんこれを記事にするつもりだから、会長がいくらきみをかばったところで、世間からのきみの評価はガタ落ち。そんな奴に、大事な土地を売るわけがないだろう」
最後にフンと鼻を鳴らした三井さんの横で、綾子さんが気の毒そうに私に忠告する。
「まつりさんも、これから後ろ指をさされて生きて行かなければならないわねえ。……いっそ、記事が世に出る前に、離婚なさったらいかが?」
そんなの、他人であるあなた方に口出しされる筋合いはない。余計なお世話です。
心の中ではそう思うのに、本人たちに強く反論できる気力はなかった。