副社長は花嫁教育にご執心
「ああ、三井な……いちおう同業者で、最近ずいぶん会社を成長させたらしい。でも、裏では悪い噂ばっかだよ。たぶん、今回俺にしたように周囲の人間を蹴落としてのし上がってきたんだろう」
周囲の人間を蹴落として……ああ、なんだかすごく納得できちゃう。今までも、汚い手ばかり使ってきたであろうことが、容易に想像できて。
「あとあの奥さんもさ、三井が稼げば稼ぐほど自分のことのように鼻高々らしい。だから、雑誌社に勤めてるっていう自分の立場をうまく使って、今回夫に協力したんじゃないかな」
「すさまじく卑怯なチームプレイですね……」
「でも……卑怯だろうと何だろうと、あれを記事にされてしまうのは確実だ。……そうなったら、まつりには本当に迷惑かけることになると思う。だから……」
沈痛な面持ちの灯也さんは、そこで言葉を切って私をまっすぐに見つめた。それから膝に置かれた私の手をつかんで、そうっと私の方へ戻した。
灯也さん……? 彼の行動に、何か引っかかるものを感じた、そのとき。
「……離婚するなら、早い方がいい」
「え……?」
思いもよらぬ言葉に、頭が真っ白になる。
灯也さん……今、離婚って、言った?