副社長は花嫁教育にご執心
「私と、それに妻もな。きみたち夫婦のことを本当に応援してるんだ。だから、綾子さんに弱みを握られても、私たちに責められても、ふたり支え合って乗り越えて欲しい。周囲が全部敵に見えても、夫婦ふたりさえ確かな愛によって絆が結ばれていれば大丈夫なんだと、見せてほしかったんだ。……しかし、どうも話がややこしくなってしまったようだな」
なるほど……要するに、会長は、私と灯也さんの夫婦としての絆を試したんだ。
でも、私たちは……。
「ということは、夫婦失格……でしょうか、私たち」
灯也さんが選んだのは、離婚の道。
そして、私はそんな彼の考えを自分一人では変えさせることができなくて、夫である灯也さんに内緒で、こうして会長に相談してしまっているんだもの。
「何を言う。今朝、まつりさんに連絡をもらって、うれしかったよ。夫婦だけで解決できない問題を、信頼のおける第三者に相談するのも、夫婦が長続きする秘訣だ」
私の弱気な発言を否定し、茶目っ気たっぷりにウインクした会長。
そっか……きっと、状況がどう転んでも、会長や鈴子さんは私たちを応援してくれるつもりだったんだ。
「会長……」
「だから、設楽くんにも言っておいてくれ。くだらん意地悪をして悪かったなと。……しかし、三井くんの方はどうしたものかね。あのぼやけた写真と怪しげな録音の内容を、本当に雑誌に載せるつもりなんだろうか」