副社長は花嫁教育にご執心
そう。一番の問題はそれだ。灯也さんが離婚の道を選ばざるを得ないのも、雑誌の影響で私に迷惑がかかるのを心配しているのが一番の理由だ。
会長と二人、悩ましいため息を吐き出したちょうどその時だった。
「いつ見ても素敵よね~。玄関のキンキラキン」
ちょうど私たちのテーブルの脇を通った、ソバージュのロングヘアをなびかせる女性が放ったセリフに、耳を疑った。
あ、あの金箔を素敵と思うセンスの持ち主もいるんだな……。一体、どんな顔を?
なんて失礼なことを思いつつちらっと女性の顔を窺おうとしたのだけど、それより隣に立つ男性の腫れぼったい顔に目が釘付けになってしまった。
「そうだろそうだろ。やはり権力を誇示するには、ああいったバブリーな装飾を施さねばな」
はっはっは。とこれ以上張りようがない太ったカラダでふんぞり返っているのは、今まさに噂をしていた人物……三井さん本人だった。
うそ……やばい、ここにいることがばれたら何かと面倒そう……。
同じことを持ったらしい会長と目を合わせ、お互い身を縮める。
幸い、三井さんは私たちの存在に気付かず、すぐ後ろのテーブルに座った彼らは大声で会話を続けた。