副社長は花嫁教育にご執心


「好きだよ。まつり」

誠実な、しかし隠し切れない欲情も交じらせた甘い声。それが鼓膜からじんわり体に染み渡って、慣れない私の体でさえ、彼が欲しいというように、熱く疼いた。

「私もです……灯也さん」

視線を絡めて微笑み合い、私たちは抱き合った。

先ほど交わしたキスを“生ぬるい”と表現した通り、その日の彼はとても丁寧に、情熱的に、そして執念深く私を攻め立てては、愛を伝えた。


――そして、長い長い行為の後。

「もう、立てません……」

灯也さたくさん愛されて幸せには違いないのだけど、腰が砕けてソファから動けなくなってしまった私。

しかし、まだまだ余裕という感じの涼しい表情をする灯也さんは「ギブアップには早いんだけど」と恐ろしいことを言って、私をソファから軽々お姫様抱っこした。

「あの、どこへ……?」

「ん? 次は風呂場で愛を語ろうかと」

「えっ!? ちょっと、あの、私、もう限界――っ!」

じたばたもがいても、溺愛スイッチの入ってしまった旦那様の力に抗えるはずもなく。

“仲直りの後は燃えるもんだから”

そんな黒川会長の助言を思い出し、ホントに仰る通りでした……なんて。

冷静にそんなことが思えるようになったのは、愛され過ぎてくたくたになり、眠る寸前になってからだった。


< 231 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop