副社長は花嫁教育にご執心


「あとから支配人に言われたの。……“俺が、まつりとの仲を従業員たち見せつけるように、公私混同なメールを送ったのもよくなかった。あなたのしたことは許されないが、もう一度別の場所でやり直す気があるなら働き口を紹介する”って。……ホント、懐の広い人だよ。完全に私の負け」

しょんぼりと俯きながら話す久美ちゃんだけど、そうして負けを認めた彼女の方が、むしろ肩の荷が下りたようにも見える。

灯也さんの紹介した職場で、うまくやれている証拠かもしれないな。

「久美ちゃん」

「なに?」

「お互いに、頑張ろう、仕事。いろいろあったけど、久美ちゃんのおかげで今の私があるっていうのも確かなことだから、もう、お互い恨みっこナシでさ」

「まつり……ちゃん。もう、ホントお人好しなんだから」

久美ちゃんは思いがけずという感じに目に涙が浮かんでしまい、慌ててそれを服の袖で拭っていた。

ほら、やっぱり久美ちゃんは久美ちゃんだ。あの時は、きっと心に悪魔でも取りついてしまったんだって、私、そう思うことにするからね――。


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