副社長は花嫁教育にご執心


「……会いたかったな。まつりのご両親。そんな素敵な由来があったなんて、思いもよらなかった」

「灯也さんは? 自分の名前の由来とか聞いたことありますか?」

急に話題を振られ、灯也さんは気まずそうに頭をかく。

「あるけど、確か母親が“イケメンになりそう”とかいう超下心満載な感じで付けたって言われた気がする」

「ふふ、でもその願い、叶ってるじゃないですか」

「まぁ、まつりにそう言ってもらえただけでも、よしとしよう」

お義母様の願い通り、今日だって私の旦那様は、どの方向から見たって完璧なイケメン。

一緒に生活を始めてひと月が過ぎたって慣れることはなく、毎日のように見惚れてしまうくらいだ。

こんなにも素敵な旦那様と、今では夫婦になって、一途に愛してもらえて……。

「私……椿庵で真面目にお仕事やっててよかったです」

「うん。お前の接客はあの店に必要だよ。……俺がいなくなっても、頑張って」

「はい、もちろ――――え?」

ちょっと待ってください。今、なにかとっても重要なことを口走りませんでした?

顔の筋肉が硬直したように動かなくなり、かろうじて動く瞳で不安感をつたえると、灯也さんはちょっと困ったように苦笑した。


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