副社長は花嫁教育にご執心


「Crystal Oceanでの仕事は、俺も気に入ってたし、リニューアルまで面倒見たかったんだけどさ。支配人としては充分な功績を残せたし、いよいよ次期社長に向けて、本社で本格的に経営の仕事することになるんだ。黙っててゴメンな」

「い、いつからですか……?」

「来月かな。まぁ、本社もここから近いし、Crystal Oceanの支配人は持ち上がりで小柳になるだけだから、困ったらアイツ頼って?」

そうなんだ……。灯也さんがお仕事でステップアップするのは妻としてうれしいし、支配人が小柳さんならまぁ大丈夫だとは思うけど……単純に、寂しいな。

灯也さんは浮かない顔をする私の頭をポンポンと撫でてから、指輪をしている方の手を取りぎゅっと握った。

「仕事での立場とか、職場環境の変化とか。そういうのって生活を共にする家族にとっては大変な試練かもしれないけどさ。それをふたり支え合って、一緒に乗り越えられてこそ、夫婦だと思わないか?」


< 240 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop