副社長は花嫁教育にご執心


甘えた声で、ねだってみた。

自分が“女性のものになる”なんて、そしてそれで喜ぶなんて発想、今までの俺にはなかった。

なのに、まつりには何されてもいいっていうか、どんどん俺を独占してほしいというか……彼女のことを愛しすぎて、ちょっと危ない思考になりつつある。

「灯、也……?」

もごもごと、言いにくそうな彼女がまたかわいい。

「うん。もう一回」

「……灯也」

ああ……愛しい人に名前を呼ばれると、なんでこんなにも幸せなんだろう。

陽射しのように穏やかな気持ちと、それからちょっと邪(よこしま)な感情も沸いてきて、俺はまつりの頬に手を添えその顔をのぞき込む。

「うーん……やばいな、キスしたい」

「ダメ! もうすぐ衣装係さん戻ってく――」

……そんなこと知るか。

俺はまつりの言葉なんか無視して、彼女の唇に自分のそれをかぶせた。

別に、衣装係が戻ってきても構わない。

なんならこのシーンを写真に撮ってもらって、披露宴の余興で会場の皆様にお見せしてもいい。


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