副社長は花嫁教育にご執心
身に着けるものが変わっただけで。髪型が変わっただけで。表情一つの変化で。俺への言葉遣いの変化で。
……どんな些細な変化でもたまらなく愛しくなってしまう存在が彼女で、だから俺は彼女を選んだのだ。
そして俺は、その愛をいちいち態度で示したいタイプだ。――たとえば、今みたいに。
そうして交わした長いキスのあと、ぷはっと息を吐き出したまつりが、俺の胸を優しく拳で叩く。
「もう、こんなところで……」
「ちゃんと軽いのにしただろ?」
「当たり前です!」
そんな痴話げんかの後、まつりの着替えを手伝ってくれる衣装担当者が部屋に戻ってきて、俺の可愛い花嫁はカーテンの向こうに隠されてしまった。
うーん、もっと見ていたかったんだけど残念……そう、ため息をついたのと同時にはっとした。
「……やばい、写真撮るの忘れた」