副社長は花嫁教育にご執心


ドレスに合うアクセサリーや小物を検討するのに使うため、今日はドレス姿のまつりを撮影するつもりだったのに、すっかり忘れていた。

あまりの可愛さに、衝動に負けてキスして……そのシーンを写真に撮られてもいいとか余計なことは考えていたくせに、肝心なことを忘れるなんて。

「あの、すみません」

……だけどそのおかげで、もう一度俺の花嫁が見られそうだ。

俺はカーテンの方に声を掛け、「はーい」と返事をした衣装係とまつりに向けて告げる。

「写真を忘れたので、もう一度ドレス着た状態で出てこられますか?」

「えっ……あっ、そういえば」

慌てるまつりの声と、ドレスの素材が擦れる音がする。どうやら慌てて着替え直しているらしい。

本当は俺が手伝ってやりたいけど、さすがにそれは自重しなきゃな。

なんてくだらないことを考えながら、俺は今度こそスマホのカメラを起動させる。

そして、忙しく揺れるカーテンのドレープの向こうから、再び愛しい花嫁が現れるのを待つのだった。








番外編 FIN



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