副社長は花嫁教育にご執心


「よかったなぁ姉さん、こんなに立派で面倒見の良い人に嫁げるなんて」

「……完全に、私の世話を彼に押し付けたいだけでしょう」

「いやいや、俺だって寂しいよ? もう、わざわざ姉さんの下着をネットに入れて洗うこともないんだな、とか」

「え、下着ってネットに入れて洗うの?」

いつも、私は脱いだらそのまま洗濯機にポイしていたんだけど、それをわざわざ拾い上げてネットに入れてくれてたのかしら……。

本当に知らないから聞いただけなのに、遊太は完全に引いた顔で私を哀れむように見た。そして、支配人の方へ深々と頭を下げる。

「設楽さん、こんな姉ですが、どうか根気よく付き合ってやってください」

「ええ。責任をもって育てますよ」

……もう、二人とも私のこと子どもか何かと勘違いしてない? 家事スキルはゼロでも、私だって職場では割と頼りにされてるんだからね。

「……しかしお前、最近仕事でケアレスミスが多いと聞いたぞ。明日も仕事だろ? ワインはその辺にしておけ」

うっ……痛いところを。私はしょぼんと肩を落とした。

そうだった……。頼りにされているのは確かなんだけど、そのくせ最近の私はうっかりミスが多い。ああダメだ、胸を張れるポイント一個もないじゃん。


< 27 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop