副社長は花嫁教育にご執心
「よかったなぁ姉さん、こんなに立派で面倒見の良い人に嫁げるなんて」
「……完全に、私の世話を彼に押し付けたいだけでしょう」
「いやいや、俺だって寂しいよ? もう、わざわざ姉さんの下着をネットに入れて洗うこともないんだな、とか」
「え、下着ってネットに入れて洗うの?」
いつも、私は脱いだらそのまま洗濯機にポイしていたんだけど、それをわざわざ拾い上げてネットに入れてくれてたのかしら……。
本当に知らないから聞いただけなのに、遊太は完全に引いた顔で私を哀れむように見た。そして、支配人の方へ深々と頭を下げる。
「設楽さん、こんな姉ですが、どうか根気よく付き合ってやってください」
「ええ。責任をもって育てますよ」
……もう、二人とも私のこと子どもか何かと勘違いしてない? 家事スキルはゼロでも、私だって職場では割と頼りにされてるんだからね。
「……しかしお前、最近仕事でケアレスミスが多いと聞いたぞ。明日も仕事だろ? ワインはその辺にしておけ」
うっ……痛いところを。私はしょぼんと肩を落とした。
そうだった……。頼りにされているのは確かなんだけど、そのくせ最近の私はうっかりミスが多い。ああダメだ、胸を張れるポイント一個もないじゃん。