副社長は花嫁教育にご執心
横向きに寝ながら雑誌をめくっていた灯也さんは、私の姿を上から下まで眺めてから、心底嬉しそうな笑みを浮かべた。
「改めて見ると、俺のスウェットがいい感じにミニ丈になってるな。っていうかまつり、脚そんなキレイだったのか。今日着てたスカートは膝隠れてたし、仕事中はズボンだから気づかなかった」
「ぜ、全然キレイじゃないです。あんまり見ないでください……」
私の脚なんて、太くも細くもない、いたって普通の脚だ。そんなに見せつけるようなファッションは好きじゃないし、今だって早く布団に入って隠してしまいたい。
一番大事な下着だって、今現在ドラム式洗濯機の中をぐるぐる回っていて、あるはずの場所にないんだから。
だぼだぼのスウェットの裾を引っ張ってなんとか脚を隠そうとしながらベッドに近づく私に、意地悪な声がかけられる。
「いやいや、嫁のだから、見るだろ。あとさわる」
「えっ! わ、私、それならリビングのソファで寝ますから!」
「駄目。ほら、こっちこい」
布団の中からにゅっと伸びてきた手につかまえられ、ベッドへダイブしてしまう。
慌てて彼に背を向け、ベッドから落ちそうなほど端に寄ったけれど、すぐに背中に大きなぬくもりがぴったり寄り添った。私は呼吸を忘れて、硬直する。