副社長は花嫁教育にご執心


「そんなに緊張しなくても……嫌か? あまりそばに寄られるのは」

耳のそばで喋らないで……! 余計にドキドキするし、全身が沸騰しちゃいそうに熱い……。

「い、いやってわけではないですけど、その……こういうのには、慣れないので」

「そうか。じゃあ、今から慣らさないとな?」

鼻先でつつっと首筋をなぞられて、ぞくぞくしたものが走る。

なにこれもう~! 心臓、こわれるってば……!

「いや、だからその、もっとゆっくりというか、徐々にというか!」

「俺的には十分過ぎるほどゆっくりだ。風呂上がりでスウェット一枚のいい匂いする嫁を前に、ハグしかさせてもらえないんだからな」

そ、そんなこと言われても……。でも、灯也さんも我慢してるってことだよね。私からも、ほんの少しくらいは、歩み寄らないとダメかな……。

勇気を振り絞って、彼の腕の中でくるりと体の向きを変えた。目の前の灯也さんは、少し眠気を催しているのかとろんとした瞳だ。

その無防備さがまた色っぽく、ドキドキが収まる気配はないけれど、私はえいっ!と心の中で叫びながら、布団の中の彼の手をそうっと握った。

灯也さんは眠たそうだった瞳を見開いて、驚いたような顔をする。

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