副社長は花嫁教育にご執心
「……まつり?」
「その……手をつないで寝るくらいなら、私にも、できると思うので……」
ああ、我ながらなんてスロースターター。
手をつなぐなんて、小中学生で済ませている子も多いだろうに、その経験がない私には、二十五歳の今でもこれが精いっぱい。間接キスすら、この間のが初めてだったんですから。
それに比べて、灯也さんはあれこれ経験豊富そうだよね。さすがに呆れてるかな……。
焦りや不安や恥ずかしさがごっちゃになって思わずぎゅっと目を閉じたら、今まで緩く握り返すだけだった彼の手が、指を絡ませながら私の手を強く握りなおした。
「……俺、もしかしたら思ってたよりもずっと可愛い嫁を貰ったのかもな」
優しげに目を細めた灯也さんがしみじみ呟き、空いている方の手で私の頬を撫でる。
そんな褒められるような言動をした覚えはないけれど、可愛いと言われるのは素直にうれしかった。
心地のいいドキドキが胸に響いて、不思議と安心する。
私の方こそ、もしかしたらすごくすごく魅力的な旦那様に出会えたのかもしれない。そう思ったら、自然と彼にこう問いかけていた。