副社長は花嫁教育にご執心
あちゃー、ミスのこと、久美ちゃんにも心配かけていたとは。
「ごめん。体調はいいしいつも通りにやってるつもりなんだけど、自分でも気づかないうちに注意力散漫になってるみたいで……」
「そっか。体調悪いとかじゃないならちょっと安心。でも、つらくなったら言ってよ? あとちなみに支配人との結婚のこと、私はまつりちゃんの口から聞きたかったんだからね」
拗ねたように口をとがらせる久美ちゃんを見て、やっと自分の至らなさに気付く。
そうだよね……普段から親しくしてる人の結婚を知るのが社内メールだなんて、私が逆の立場でもちょっとショックだ。
でも、久美ちゃんに話さなかったのは特に理由があるわけでなく、結婚話があまりにトントン拍子に進んで話すタイミングがなかっただけなのだ。
とはいえ事前に報告しておかなかったのはやっぱりよくなかったよね……。私は両手をぱちんと合わせて素直に謝った。
「そうだよね……ごめん。重ね重ね」
「うそうそ、別に怒ってないよ。今日も頑張ろ、ミスには注意して」
「うん。ありがとね久美ちゃん」
久美ちゃんが同じ時間帯なら、忙しくても仕事は上手く回るだろうし、変に焦ったりすることもないだろう。今日は気を引き締めて、ひとつもミスがないようにしよう。
……そう心に誓ったにもかかわらず、よりによってお昼時の忙しい時間帯に、私はまたしてもやらかした。