副社長は花嫁教育にご執心
「そ、それは、私たちのペースってものがありますから……」
「そのようですね。設楽にも同じことを言いましたが“余計なお世話”だと一蹴されてしまいました」
……ホッ。灯也さんも同じ反応だったのか。胸をなでおろしたのもつかの間、小柳さんは衝撃的なことを言い出す。
「ちなみに、僕の想い人というのはつい先日まで既婚者だったのですが、この度めでたく離婚しましてね。彼女を励ますために、旅行を計画しているのです。それに、設楽とあなたも同行していただきたい」
「え、え? ちょっと待ってください! なんか、おかしな情報がたくさんあったような……」
小柳さんの想い人がつい先日まで既婚者だった? じゃあ、なんでその人は灯也さんのことを想っているの?
それに、離婚した、って……。
「まぁ、奥様にはすべて知っておいていただいた方がいいでしょうね。貴重な休憩時間をつぶしてしまいますがよろしいですか?」
「はい。……そこまで聞いたら全部聞かないと気持ち悪いし、教えてください。灯也さんと小柳さんと、その女性のこと」
「わかりました。まず、女性の名は広瀬杏奈(ひろせあんな)。僕と設楽と彼女は、大学の同級生でした」