副社長は花嫁教育にご執心
「今日は俺の知り合いばっかだから、もしかしたら居心地悪い思いをするかもしれないけど、これだけ信じて欲しいんだ。俺は、誰よりまつりを大切に思ってるってこと。だからこそ、今日ここへ連れてきたんだって」
「……灯也さん」
居心地悪い思い、というのが具体的にどういうことなのかわからないけれど、彼の言葉に嘘はないというのはわかる。
私がずっと不安に思っていた杏奈さんに関しても、気に病む必要はないってことだ。灯也さんがそう言うなら……。
「……わかりました。信じます」
「ごめん。悪い奴らではないんだけど……なるべく俺もそばにいるようにはするから」
「わかりました。でもさっきの約束も、守ってくださいね?」
「さっきの約束……?」
「私が酔ったら、介抱してくれるって」
私はこのとき心に決めていた。今夜は、前に遊太に言われたように、灯也さんを押し倒す……というとなんだか乱暴だけど、思い切って誘惑してみようって。
何も伝えずに、ひとりで不安を持て余すのは、もうつらいから。ちゃんと気持ちを伝えて、もっと、灯也さんと深くつながりたい――。
「そんなの、当たり前だろ」
目元をほころばせた彼の笑顔は、いつも通りに優しいものだ。
杏奈さんのことは極力気にしないようにして、信じよう。自分の夫になる、灯也さんのことを。