副社長は花嫁教育にご執心
「でも、離婚してしまった……」
「そーそー。杏奈は彼を好きになろうと努力したらしいんだけど、向こうがもう政略結婚だって割り切りすぎててバンバン浮気するような奴だったらしいの」
“離婚”だなんて、結婚すらまだである私にとって、あまりに重い響きを持つ言葉だ。
杏奈さんは、そんなつらい経験から、あんな風に泣き出してしまったわけか……。
「で、杏奈はやっぱり自分は灯也が好きだったんだなーって気づいて、今日は結婚してからずっと欠席してたこの集まりに久々に顔出したってわけ。まつりさん、その目的わかる?」
「え?」
ぜんぜんわかりませんけど……。
「だからさ、あの子、灯也のことあなたから奪う気だよって言ってるの」
和香子さんにビシッと人差し指をつきつけられ、頭を殴られたような衝撃を受けた。
う、奪う……? 私から、灯也さんを……?
物騒な言葉に呆然となり、口を半開きにして固まる私。
でも、そういえば小柳さんも言っていたっけ。杏奈さんは、離婚で心に受けた傷を、灯也さんに癒してもらいたいみたいだって。
ということは、やっぱり……。