副社長は花嫁教育にご執心
「ここのオーナー、親父の知り合いでさ。道具とかウエア持って帰るのが面倒だって言ったら、預かってくれることになったんだ。しかも手入れまでしてくれて」
「だから道具関係は手ぶらだったんですね」
「そういうこと。で、まぁその延長でまつりのウエアも用意しといて欲しいって頼んだら快く了承してくれたんだ。部屋にあるはずだから行こう」
話しながらログハウス調の廊下を進み、二階に並んだ部屋のうちのひとつの前で立ち止まる。
「さ、ここが今日俺たちが止まる部屋」
灯也さんがカギを開け、電気を点けてくれる。
廊下と同じく木のぬくもりが感じられる部屋は、ベッドがふたつ並んだツインルーム。
ベッドとベッドの間には握り拳ひとつぶんほどの隙間があって、いつも灯也さんとひとつのベッドで添い寝している私は、なんとなく寂しいものを感じる。
「ベッド、この隙間がなんだか寂しくないですか?」
「そうか? 今夜はかなり肉体的に疲れて寝るだろうから、ひとりで悠々寝た方が疲れが取れるんじゃないか?」
そ、そりゃまぁ仰る通りですけど……。
灯也さんの発言に特に深い意味はないのだろうけど、そっけない態度にちょっと傷つく。