副社長は花嫁教育にご執心


お嬢様でもなんでもない私が、レジャー企業としては日本有数の設楽ホテルズグループの御曹司で、弱冠三十歳にして副社長をつとめるスーパーマンみたいな人と結婚して、“設楽まつり”になる?

笑えない冗談にもほどがある。

「……あのう、本気で仰ってるんですか?」

「ふざけて結婚の話をする奴いないだろ」

そりゃそうだけど、こんな短時間に起きた些細なきっかけで結婚の話をする人だっていないでしょ。

そもそもなんでこんな話になったんだっけ? 確か……タイルだよね?原因。

「いや、ですが支配人と私は愛し合っているわけでもありませんし、そもそも私ではあなたのお相手として不足ありまくりでしょうし、辞退させていただいても?」

「なんだ、そんなこと」

取るに足らないことだというように鼻を鳴らした彼は、組んでいた脚をほどいてソファから立ち上がり、私の目の前に立つ。

背、高い……百八十近くはあるんじゃないかな。それに、近くで見れば見るほど整った顔の作りをしていて、思わずぽうっと見とれてしまう。

こんな人が旦那様になるなんて、毎日心が落ち着かなくて困るだろうな。というか、ホント……私の女子力じゃ、隣に並んだって笑いものになるだけでしょ?


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