副社長は花嫁教育にご執心
ああ、本当に二人はここに……? そして、灯也さんは無事……?
胸に手を置いてハラハラしている私に対し、隣で腕組みをする小柳さんはポーカーフェイスでとんでもないことを言う。
「杏奈の喘ぎ声は聞こえるか?」
「ちょっと待ちなさい! 今確認中よ!」
あ、喘ぎ声を……? そんなもの、聞こえて堪るもんですか……!
そう願いつつも、和香子さんが難しい顔で聞き耳を立てている間、まったく生きた心地がしなかった。
「話し声はするけど……大丈夫そうね」
やがて、冷静にそう言った和香子さんが、ドアノブに手を掛ける。
そうして開いたドアの向こうを、和香子さんの背中から勇気を出して覗いてみると。
「あれ。……みんな戻ってきたのか」
灯也さんは呑気な調子で言ったけど、私たちは呑気じゃいられなかった。
ベッドに腰掛ける杏奈さんは、体に毛布を巻き付けてはいるけれど、肩は出てるし脚は太腿から下すべてがのぞいている。
ま、まさかその下は一糸まとわぬ姿なの……? 想像しただけで、頭がくらくらした。