副社長は花嫁教育にご執心
「灯也……見損なったわ」
和香子さんの肩がわなわな震え、今にもとびかかって殴りそうな雰囲気。
もちろん私もショックだし、どうしてこんな状況なのかと二人を問いただしたいけれど……一歩足を踏み出そうとしたら、床がぐにゃっとした。
なんだか、体がおかしい。頭が熱くて視界が揺れてて。っていうか、体も揺れてる……?
「……まつり?」
それにいち早く気づいたのは灯也さんで、駆け寄ってきた彼の心配そうな表情にホッとした私は、足元からふっと崩れて倒れる――、と思ったのだけれど。
次の瞬間には、がしっと、背中を支える強い腕の感触が。
「危なかった……大丈夫か?」
床に打ちつけられる直前に、灯也さんが抱き留めてくれたらしい。
優しい腕に身を預けながら、私は弱々しく微笑んでうなずいた。
今日は散々な一日だったけど、やっと灯也さんが私のところへ来てくれた今が、一番幸せかも……。
そんな場違いなことを思っているうちに、意識が遠のいていった。