副社長は花嫁教育にご執心


「私、おかゆとか作れませんけど」

「市販品でいいよ。あっためて、あーんしてもらえればそれだけで超しあわせ」

そう言ってふっと笑った彼が、今度こそ私の唇に自分のそれを重ねた。

「ン……」

当たり前だけど、灯也さんの体温が私よりずっと低いのがわかる。そして、彼もその逆を感じたみたいだ。

「あっつ、まつりの唇」

その温度が予想以上だったみたいで、彼の瞳に驚きの色が浮かぶ。

「灯也さんは……冷たくて気持ちいい」

「そう?……なら、全部、吸い取ってあげようか」

吐息交じりの掠れ声にささやかれ、えっ。と思っている間に再び唇を合わせられ、どういう意味かと聞き返すのもままならなかった。

冷たい舌が口内をうごめき、最初はその温度差が心地よかったけれど、段々とそうはいかなくなってきた。

唾液を交換し合うような甘く蕩けそうなキスを繰り返され、体温は下がるどころかむしろ上がってくる。

頭の中もますますぼうっとして、私は呼吸を荒げるばかりだ。


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