副社長は花嫁教育にご執心


「もしそのほかに気に入った指輪があれば、そっちは婚約指輪としてプレゼントしてもいいし」

「そ、それはいいです! どうせ飲食の仕事ではつけられるのは結婚指輪だけだし、私ズボラだから失くしたら大変ですもん」

「そうか? ま、とりあえず見てみよう」

灯也さんにそっと背中を押され、私は初体験のきらきらした世界に飛び込んだ。

そのお店は銀座に本店があるのだというだけあって、宝石も素晴らしければ接客も一流。

灯也さんと販売員の女性に勧められるがままにたくさん試着をして、気に入ったデザインのものを決めることができた。

ゆるやかなV字カーブを描いたフォルムが指を綺麗に見せてくれ、女性用の方にはさりげなくダイヤが三粒品よく輝く、シンプルなデザイン。

そして素材は女性用だけピンクゴールドにするのも人気だと勧められたけれど、お揃い感を重視したかった私は、灯也さんと同じプラチナを選んだ。

内側にはふたりのイニシャルと、縁起がいいとされる小さなブルーダイヤを埋め込んでもらうことに決め、ひと月ほど時間はかかるけれど、完成したときには自宅に発送してもらえるそうだ。




< 95 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop