借りたモノ
手繰り寄せ、光の元に出してみれば、それは1冊の本だった。


「これ…」



本子(モトコ)から借りてた本だ。

こんなところにあったなんて…




10年前、本子の家に遊びに行った時、この本のシリーズを借りて読んだらハマって夢中になった。

けれど、あと一冊で読み終えるところまできたのに、門限の時間になってしまって帰らなくてはいけなくなって。

そしたら、返すのはいつでもいいからと最後の一巻を貸してくれたのだ。

だが数日経ち、家に持ち帰ったはずの本が無くなっていることに気付いた。

どこを探しても見つからない。

あの時は正直焦った…

人から借りたものを無くしてしまったんだから。

本子にどう言おうかとかなり悩んだが、それから直ぐに二人とも仕事が忙しくなって、頻繁に会えなくなった。

私には都合が良かった。

考える時間が出来たのだから。

でも、いくらたっても良い考えなんて浮かんで来なかった。


頻繁に会わなくなったと言っても本子とは半年に一度は顔を会わせた。
二年ほどは会う度に、私は次会ったときに本を返すからと誤魔化し続け、本子も次に会う時に返してくれればいいと言っていたが、いつしか二人ともその話題にはふれなくなった。

そして、私は本子に会いづらくなり、遊びやご飯に誘われても誤魔化して避け続けた。



だが、あることが切っ掛けで今は一月に一度会うようになった。







この本見たら本子怒るよね…


所々色が変わっていて、表紙の端が切れてあの頃とは変わり果てている本…


でも、本子ならきっと、謝ったら許してくれる。


私は本子に連絡を入れた。



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