大好きな彼は超能天気ボーイ
幼馴染の梨乃さんは功の気持ちが掴めない。
「そっか。やっぱりね。でも俺は
そんな梨乃ちゃんを含めて好きだから。」
「先輩…?」
「だからいつか、
俺が梨乃ちゃんを奪うから。」
う、奪う…
その少し横暴な言葉に、動揺してしまう。
先輩はそう言い残し、体育館を後にした。
一人残された私も、とぼとぼと出ていく。
複雑だ。
愛なんかいらないって
ずっと思ってきたのに、築いてきたのに、
それがどんどん崩れていく。
それが、少し怖かったりもする。
ふと顔を上げて私は歩みを止めた。
ん?あれは…
私の視線の先にいたのは、
功と…髪の長い女子生徒。
これはまさか…
そう勘づいた私は一気に不安に襲われる。
その先輩は、
ハーフで学校でも人気なミリア先輩だったから。
私は咄嗟に近くの柱へ隠れる。
だってあの空気感の中通りすぎる勇気など私には無かったから。
そして聞こえてきたのは…
「何で私じゃダメなの?ねえどうして?
だって私、今までずっと振られたことなんかないのに…どうして?」
先輩は嘆き、功に迫っていく。
どうやら振られた事にショックを受けている様子だ。
良かった…そう思うのもつかの間…
先輩は功の肩を掴んで、
「私はこんなにも好きなのに…、」
その手が功に触れた瞬間、
功に触れないでっ
咄嗟に思ってしまった、
独占欲がまるで露わな感情。
功はその動きに全く動じない。
そして真っ直ぐ先輩を見つめた。
その綺麗な顔で。
「そう言ってもらえて嬉しいよ。でも僕には好きな子がいるんだ。顔だけじゃなく、
中身もちゃんと見てくれる子なんだ。」
好きな子?
功に そんな人がいたの?
功のその顔は、誰かをまるで愛しく思っている晴れ晴れとした顔。
こんな顔、見たことない。
「…顔だけ…、」
先輩も俯いてそれ以上は反論しなかった。
「何だ、図星?」
功は、そう呟く。
心なしか、
私にはその背中が少し寂しそうに見えた。
そして先輩はその場を後にした。
とても悔しそうに。
さて、私はどうしようか。
このタイミングで抜けていっても、
怪しまれる。
盗み聞きもバレる。
当分の間。ここに隠れていなくては。
きっとバレることは…
「梨乃、いるんでしょ?」
功は柱の方を向いてそう話しかける。
うわあ、いとも簡単にバレてしまった。
功、君はエスパーなのか?
透視かなんかできる、そんなの。
うーん。こうなったら…
「あはは…功、よく分かったね…。」
そう言って柱の表に出る。
「梨乃、いつから聞いてたの?」
「え、えっとー多分ほとんどかな?
でもびっくりしたよ。功、好きな人いたんだね。」
「うん。いるよ。ずっと前から。」
ずんっと心に重りがつく。
ずっと前から
その台詞に私は傷つく。
ずっと前から功はその人を思ってるんだ…
私じゃない誰かの事を。
これじゃあせっかく自分の気持ちに気付いたのに、失恋したようなものじゃないか。
「へえ。そっか。」
私は興味なさそうに返した。
ほんとは気になる、
功の好きな人。
どんな子なんだろう?
その子はやっぱり可愛い?
私が入る余地はある?
「で、
盗み聞きしたんだよね。」
鋭いその指摘。
「っ …ご、ごもっともです…」
功はニヤリと悪そうに笑い、
ゆっくり私の方へ近づく。
そして
その距離はどんどん短くなっていって…
すっ
功の片腕が、私の顔のすぐ横へ伸びる。
前には功、後ろには柱。
これって…か、壁ドンですか?
ドンじゃなくて、すっだけど…
それに、顔が近い…
「ちょっ、こ、功?ね、近いよ?」
「うん。近いよ。
動揺してる梨乃、可愛い。」
その目はまるで楽しんでるかのような、
余裕のありすぎる目。
功がどうして、
こういう時だけ私より、
うわ手に見えるんだろう。
まるで私だけが意識してるみたいに思えて、
余計恥ずかしくなる。
「なっ…ね、功?」
私は功の肩を叩く。
そんなのにも動じないまま、
徐々に距離が短くなっていく。
少しでも動いたら、
鼻がぶつかりそうなほど。
するとコツンっとくっつけられた額。
目を開ければ、
白すぎる肌と、長いまつ毛。
何だろう…こんなにもドキドキしてるのに、
私は落ち着きもするんだ。
「なんか、こうしてると落ち着く。」
功はもう一度私を見て、そしてまたその綺麗な目を閉じる。
「わ、私も。」
私もそれにすぐさま返事をする。なんでこういう時だけキョドッちゃうかな?
そよ風が私たちの間を吹き抜けて、
時計台から、
カクッ、カクッと時を刻む音が聞こえる。
私は目を閉じて、功に身を委ねた。
そんな梨乃ちゃんを含めて好きだから。」
「先輩…?」
「だからいつか、
俺が梨乃ちゃんを奪うから。」
う、奪う…
その少し横暴な言葉に、動揺してしまう。
先輩はそう言い残し、体育館を後にした。
一人残された私も、とぼとぼと出ていく。
複雑だ。
愛なんかいらないって
ずっと思ってきたのに、築いてきたのに、
それがどんどん崩れていく。
それが、少し怖かったりもする。
ふと顔を上げて私は歩みを止めた。
ん?あれは…
私の視線の先にいたのは、
功と…髪の長い女子生徒。
これはまさか…
そう勘づいた私は一気に不安に襲われる。
その先輩は、
ハーフで学校でも人気なミリア先輩だったから。
私は咄嗟に近くの柱へ隠れる。
だってあの空気感の中通りすぎる勇気など私には無かったから。
そして聞こえてきたのは…
「何で私じゃダメなの?ねえどうして?
だって私、今までずっと振られたことなんかないのに…どうして?」
先輩は嘆き、功に迫っていく。
どうやら振られた事にショックを受けている様子だ。
良かった…そう思うのもつかの間…
先輩は功の肩を掴んで、
「私はこんなにも好きなのに…、」
その手が功に触れた瞬間、
功に触れないでっ
咄嗟に思ってしまった、
独占欲がまるで露わな感情。
功はその動きに全く動じない。
そして真っ直ぐ先輩を見つめた。
その綺麗な顔で。
「そう言ってもらえて嬉しいよ。でも僕には好きな子がいるんだ。顔だけじゃなく、
中身もちゃんと見てくれる子なんだ。」
好きな子?
功に そんな人がいたの?
功のその顔は、誰かをまるで愛しく思っている晴れ晴れとした顔。
こんな顔、見たことない。
「…顔だけ…、」
先輩も俯いてそれ以上は反論しなかった。
「何だ、図星?」
功は、そう呟く。
心なしか、
私にはその背中が少し寂しそうに見えた。
そして先輩はその場を後にした。
とても悔しそうに。
さて、私はどうしようか。
このタイミングで抜けていっても、
怪しまれる。
盗み聞きもバレる。
当分の間。ここに隠れていなくては。
きっとバレることは…
「梨乃、いるんでしょ?」
功は柱の方を向いてそう話しかける。
うわあ、いとも簡単にバレてしまった。
功、君はエスパーなのか?
透視かなんかできる、そんなの。
うーん。こうなったら…
「あはは…功、よく分かったね…。」
そう言って柱の表に出る。
「梨乃、いつから聞いてたの?」
「え、えっとー多分ほとんどかな?
でもびっくりしたよ。功、好きな人いたんだね。」
「うん。いるよ。ずっと前から。」
ずんっと心に重りがつく。
ずっと前から
その台詞に私は傷つく。
ずっと前から功はその人を思ってるんだ…
私じゃない誰かの事を。
これじゃあせっかく自分の気持ちに気付いたのに、失恋したようなものじゃないか。
「へえ。そっか。」
私は興味なさそうに返した。
ほんとは気になる、
功の好きな人。
どんな子なんだろう?
その子はやっぱり可愛い?
私が入る余地はある?
「で、
盗み聞きしたんだよね。」
鋭いその指摘。
「っ …ご、ごもっともです…」
功はニヤリと悪そうに笑い、
ゆっくり私の方へ近づく。
そして
その距離はどんどん短くなっていって…
すっ
功の片腕が、私の顔のすぐ横へ伸びる。
前には功、後ろには柱。
これって…か、壁ドンですか?
ドンじゃなくて、すっだけど…
それに、顔が近い…
「ちょっ、こ、功?ね、近いよ?」
「うん。近いよ。
動揺してる梨乃、可愛い。」
その目はまるで楽しんでるかのような、
余裕のありすぎる目。
功がどうして、
こういう時だけ私より、
うわ手に見えるんだろう。
まるで私だけが意識してるみたいに思えて、
余計恥ずかしくなる。
「なっ…ね、功?」
私は功の肩を叩く。
そんなのにも動じないまま、
徐々に距離が短くなっていく。
少しでも動いたら、
鼻がぶつかりそうなほど。
するとコツンっとくっつけられた額。
目を開ければ、
白すぎる肌と、長いまつ毛。
何だろう…こんなにもドキドキしてるのに、
私は落ち着きもするんだ。
「なんか、こうしてると落ち着く。」
功はもう一度私を見て、そしてまたその綺麗な目を閉じる。
「わ、私も。」
私もそれにすぐさま返事をする。なんでこういう時だけキョドッちゃうかな?
そよ風が私たちの間を吹き抜けて、
時計台から、
カクッ、カクッと時を刻む音が聞こえる。
私は目を閉じて、功に身を委ねた。