姫☆組 2nd (姫シリーズVol.2) 【完】
それでも潤也は、感情のない、まるでドールのようになってしまった姫花でさえ、一緒に居れる事に幸せを感じてしまっていた

同じ屋根の下で生活をしていたが、寝室はもちろん別、移動のときに姫花を抱き上げる事は日常茶飯事だったが、それ以外で、姫花に触れることは一切無かった

ふたりは、友人という一線を越えることはなかったのだ

潤也にとって、姫花が回復していくことは、嬉しくもあり、一緒にいる時間のタイムリミットを暗に知らしめていた

もちろん、潤也も健全なる男子な故、苦労がなかった訳ではない

だが、今手を出してしまうのは、ただの自己満足に過ぎず、精神的に病んでいる姫花には何一つ残るものはない

潤也のキャリアにとって、今やらねば、いつやるんだ!
と言うほど大事な時期なのは、承知の上で、オーディションの数を減らし、スケジュールも余裕を持たせ、姫花の側についていたのだ

仕事に対する姿勢でマネージャーはもちろん、事務所の社長とも何回も話し合った

日本に残っていれば、忙しい毎日だっただろう・・

そんな絶好調な時期にあえての海外への挑戦・・

潤也の熱意に折れた形の事務所側からしてみれば、一人のオンナの為に・・と潤也の行動に理解できないでいた

それでも、潤也は、日向が潤也の住む地で逝ったのは“偶然じゃなく必然”だと思っていた

なぜなら、潤也の住む国に日向が住んでるわけでもなく、公演があったわけでもなく、ただ移動の為に通過するだけの国だったのだから・・

日向が列車を選んだのは、楽器のためだった

気圧の変動でも日向のバイオリンは微妙にズレをきたすほど繊細なものだったから・・

もし、飛行機に乗っていたら・・

もし、出発を一日遅らせていたら・・・

全ては、必然・・ その考えが潤也の頭を占めていた



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