オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
「剣ちゃん、お願い!返して!!」

「ダメよ!絶対ダメ!!」


2人のやり取りから察するに、コンパにきたらスマホを返す約束でもあったんだろう。

なんで、そんなことになったかは知らないけど……


――完全に悪者じゃん、優華ちゃん。


“王女様の優華ちゃん”に、“召使の彼女”が大切なものを返してくれとお願い事をしている。

まるっきりシンデレラの姉役だ。

店の中もアウェイな雰囲気。

でも……

やっぱり、なぜか優華ちゃんに悪意は感じない。


――俺だけなんだろうか?


「剣ちゃんっ!お願いだからっ!!」


悲鳴みたいな彼女の声に、思考が寸断された。

その声に弾かれるように俺が凝視したのは、叫んだ彼女じゃなく、優華ちゃんのほうだった。


「ダメよ!!…私はっ、

今日っ、

ここにっ!

…来なさいっ!!って、そう言ったのよっ!!」


命令のようで、でも決してそうじゃない。

絞り出す様な優華ちゃんの声は、まるで懇願のように聞こえる。


やばいんじゃないのか?優華ちゃん…

そんな、意地張ってると……


――意地?


「わけのわからないオトコと会うんじゃなくて、ここに来るように言ったのよ!!

霧里っ!あんたねぇっ!!

自分の立場をわきまえないよっ!?あんたっ、あんたはねぇっ……!」


そう。

このときまでは、確かに主導権は優華ちゃんにあるものだと、俺は思ってたんだ。

でも、違う。


「……もう、いい」


その冷たい声の響きに、同一人物のものだとは、すぐにはわからなかった。

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