オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
「…霧…さ……と」
「……大丈夫。もう……佐々くんとは、会わないよ」
彼女は、
ふわり…
笑うと、
くるりと背を向けた。
その、凛とした姿の美しさに、誰もが見とれる。
「待っ…待ちなさい!……スマホはっ!?」
「……優華にあげる」
振り向きもせず、
何の未練もないように、
静寂の中、彼女は店を出た。
ガタンっ!!
その彼女を追いかけようとして、優香ちゃんがテーブルに足をとられて、よろめく。
咄嗟に支えるけれど、“触るな!!”っと、にらみ付けられたうえに、突き放される。
「待ってっ!!…花美ちゃんっっ!!」
泣き出しそうな声が耳に残る。
優華ちゃんが、彼女を追って出口に向かって走り出した。
俺も慌てて後を追う。
優華ちゃんは、正真正銘のお姫様だった。
自分が召集したコンパのクセに、盛り上げようともしない。
わがままで、
気位が高くて、
話しかければ、鬱陶しげににらまれる。
そのくせ、時折不安げに見つめていたのは、クマだとかウサギなんかが、いっぱいぶら下がったピンクのスマホ。
花美ちゃんのものだったんだろう。
両手に抱き込むように、大切に握り締めていた。
――ツンデレもいいとこだ。
自分を見て欲しくて、好きな子に意地悪してるだけじゃないか。
店の外にでると、佐々の彼女を見失った優華ちゃんが、キョロキョロと落ち着かない様子で立っていた。
数人のオトコが声をかけているのも、完全無視。
その態度にオトコ達がイラついているのか、ヒソヒソと何かを相談し始めている。
剣菱のお嬢のクセに、なんでSPがついていないんだよ。
どうせ、巻いてきたんだろうけどさ……
「…はぁ~…」
なんか…佐々の気持ちがわかる気がした。
――危なっかしくて、見ちゃいられない。
「右だよ。駅のほう」
俺の声に弾かれるように、優華ちゃんが走り出した。
振り向きもしないで、まっしぐらに。
舌打ちをするオトコ達を一瞥して、俺も彼女に続いた。