オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
延々続く階段を駆け上がってると、不意に、昼間の意味深な言葉がよみがえってきた。


“コンパいかねぇの!?”


そうだった、成久のヤツ……

一体なに隠してんだっ!


「成久っ!てめぇっ、ハアッ…、どういうことだっ!説明しろっ!!」

「昼間の彼女っ…、花美ちゃんさっ、ハア、ハアッ…コンパに来ることになってたんだよっ!」

「……っ」


階段を駆け上がっていた足が、止まる。


「はぁ?…なんだってぇ!?」


マジかよ……

空しさがこみ上げる。

花美の大事な用事って……

ソレかよっ!!


「よせっって!」


壁に八つ当たり寸前で、成久がオレ腕を静止する。


「キレるなよっ!……仕方なかったみたいだしさ」


成久が言うには、スマホをカタにとられてたらしい。

どおりで返事がないわけだ。


「クソッ!!」


最上階の重厚な玄関ドアの前で、息を切らしながら、カードキーを通すオンナ。


――こいつのせいかよっ


でも、ふと……


――なんだ?…どっかで……


見たことないか?このオンナ…


「花美ちゃんっ!!」


その声に、ハっとして、

続いて駆け込んだ花美ん家の中は、想像以上に真っ暗だった。

成久が明かりをつける。

…と、

広いリビングが、白熱灯の暖かい光の中に照らし出される。


飲みかけのコーヒーカップに、

ソファーにクシャリとおかれたブランケット。

脇に置かれたクッションが……

誰かがうたた寝してたんだろう、ひしゃげた形のまま置かれてて……


キッチンに洗い上げられた食器類。

取り入れられたままの洗濯物。


一見……


何の変哲もない、幸せそうな家庭のリビング。

でも、なんだか違和感があって……

理由は、その部屋に一歩踏み入ればわかった。

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