オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
「……あんたじゃなくたって、いいんだから……っ」


嫌悪感を丸出しでオレを睨む。

その表情に、やっぱり、見覚えがある。


「誰でもいいのよっ、あの子はねぇっ!」


――そうだ…、どっかの社長だか、くだらねぇ新年の挨拶会で……


「そばにいてくれるんなら、誰とだって寝るのよっ!!」


――見た。


「…剣菱……」


現剣菱家当主の孫娘。


『剣菱優華』


「オトコなんてぬいぐるみと一緒っ!両親が死んだ寂しさを紛らわすのに、次から次へとあさってんのよ!!あの野良猫!!」


ドカッ!!


剣菱優華が足を振り上げると、蹴られたぬいぐるみが宙を舞い、ぼたぼたと落下した。


「どれも同じっ……!!でも、あんたはっ…あんただけはダメだ!!」


どっかで聞いたことのあるセリフ。

そう。

父さんが、反対した理由はなんだ?


「佐々はダメ!!絶対にダメっ!」


たぶん、俺の考えは当たってる。


「…“霧里”って……、あいつ…」


「霧里は母親の旧姓よ。なに?知らないで手をだしたの?」


嘲笑交じりのその声に、花美のコト、なんも知らねぇんだと思い知らされる。


東の『剣菱(けんびし)』

西の『佐々山(ささやま)』


そう揶揄されるほど、この家同士は昔から仲が悪い。


「例え両親が死んで氏が変わろうと、父親が剣菱の人間だった以上、剣菱の血を一滴たりとも、佐々山の人間には渡さないっ!!」

「くっだらねぇ~」


思わず口に出た。

マジで、くだらねぇ……

家がなんだっていうんだ。


「そんなコトより、花美が行きそうなトコに心当たりはねえのかよっ!」


オレには……ない。

悔しいけど……

でも、偉っそうなわりに、剣菱優華も似たようなもんだった。


「そ、そんなこと……急に言われたって……」


返事も想像通り。

だろうな……

花美のこと、“誰とでも寝る”なんて言うオンナが、知ってるわけねぇか……

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