オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
<side 佐々>

ひっくり返ってた、オトコの胸ぐらを再びつかむ。

花美がいなくなってから、5日目。

ようやくつかんだ目撃情報。


「佐々、もう殴るな。殴るなよ?これ以上やったら話を聞く前に伸びちまう」

「……」

「佐々っ!!」

「わかってんよっ!!何度も言うなっ!成久っ!!」


これ以上はナイと思ったのか、オトコが睨みつけながらオレの手を払いのけた。

調子こいてんじゃ…

ねぇぞっ!!


ドカッ!


大通りの街灯の明かりが、差し込む程度の暗い路地裏。

蹴りがオトコの腹に露骨に入ると、屈みこむようにして膝を付いた地面に、さらに暗い影が落ちた。


「あ~、佐々ぁ~…、もう勘弁してやれよ…暴力反対」


両手を挙げ、“降参”のアクションを取りながら成久が近づいてくると、オレの前に立ちはだかった。

チタンフレームの眼鏡が、足元のオトコを冷たく見下してる。


「あんたらも、あんだけ綺麗な子が一人で歩いてたらナンパぐらいするよなあ?」


物分り良さ気に声をかけるけど、成久の顔は笑っちゃいない。

胃液を垂らしながら顔を上げたオトコのそばに、すでに2人、気を失って倒れてる。


「追い詰めて、ここら辺で見失ったんだな?」

「……だからなんだよっ!!ぁああっ!?」


懲りもせず噛み付いてくるオトコを、相手にもせず、成久がオレのほうを振り返る。


“落ち着け”


無言で、オレを制止したあと、言い聞かせるように淡々と言った。


「…というわけだ。佐々、とりあえず逃げ切れたみたいだし、花美ちゃん無事ってコトで」

「んなの……わかんねぇじゃん…」


夏休みに入ったせいか、このテのオトコがウジャウジャいる。


何かあったんじゃねぇ?

拉致られてねぇよな?


最悪の事態が頭ん中から離れない。

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