オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
あの剣菱のバカオンナのせいで、あいつスマホだって持ってないんだ。

何かあったとしても、助けも呼べねぇ……


「でも佐々、ここ数日でオンナがヤバかったって話はこれぐらいだ」

「……」


成久が集めてきた情報に間違いはない。

今のところ、花美が危険な目にあってる可能性は、確かに低いんだろう。

そう、自分自身に言い聞かせて、

ほんの少し、安堵した。

でも、そんなの一瞬だ。


――じゃあ、何でだよっ……

――なんで何の連絡もよこさないっ!?


今までに、考えては幾度となく行き着いた、その問いの答えに、全身を落胆が襲う。


わかってる。

花美は無事だ。

助けを呼べないわけじゃねぇ。

呼ばねんだ。


『佐々くんとは……もう会わないよ……』


最後に花美を見たのは、成久と剣菱優華だった。

必要ないから。

……そう。

姿を消したのは、花美の意思なんだろう。


「クソッ!!」


頭ん中がグチャグチャだ。

すぐそばにあったゴミ箱を、思いっきり蹴り上げた。

プラスチックが空っぽの音を響かせながら簡単に吹っ飛ぶ。

駅前の繁華街からたいした距離でもないのに、

大通りから道1本入っただけなのに、誰も気づきゃしねぇ!!

バカばっかだっ!!


「バカ花美ッ!なに考えてんだっ!!さっぱりわかんねぇっ!!」

「…何度も確認して悪いんだけどさ、どっか行きそうな心当たりはないのかよ、佐々ぁ」

「ねぇっ!!」

「はぁ~っ……威張るなよ」


――お前こそ、ため息つくなっ!


ズイッ!


足がぶつかるほど成久に詰め寄ると、額を押し付けた。

数センチの身長差の分だけ、見下して、睨み付ける。


「さっきから、わかんねえつってんだろっ!!大体あいつは、初めて会ったときから、ワケわっかんねぇオンナなんだよ!!」


今更わかるかっ!!

でも……、先に視線をはずしたのはオレのほうだ。


「……佐々、お前焦りすぎだ。もう少し冷静になれ」


顔色一つ変えずに、平然と指図しやがる。

そう。圧倒的に成久のほうが正しい。

いちばんのバカはオレだ。
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