オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
あいつのこと、なんも知らなくても、好きだ。

好きに……なってた。

舞い上がって……

花美のこと知るより前に、自分のものにすることで頭の中がいっぱいになってて……


――……気づいたらこのあり様だ。


「マジでねぇよ…。ほとんど、ひとめ惚れみたいなもんだから…」


思わず出た本音に、自分で言ってて情けなくなる。

気まずさに、うつむいて目を閉じるけど、それで浮かんでくるのは、花美の笑顔ばっかりだ。

どうしようもなくて、もう一度目をあけ、目の前の現実に向き合う。

ダメもとで考えてみる。

あいつは、なんでいなくなったんだろう……って。

その時、


「…っ佐々っ!!」


成久の声に我に返ると、軽い金属音が闇夜に響く。


ガランッ…ガンッ!!…

ガラン!!


チャンスだとでも思ったのか、性懲りも無くオトコが殴りかかってきた。

そのくせ、オレがよけただけで、そいつは勝手にバランスを崩し、どっかの店のトタンにぶつかって倒れ込む。


「懲りねえヤローだなぁああっ!!」


ドカッ!!


踏み潰すように蹴りを入れる。


「考え事してんだよ!静かにしてろっ!!」


すると視界の隅に、目が覚めてたんだろう、伸びてたはずの2人のオトコも、殴られた痕をさすりながら、いまだにブツブツと文句言ってやがる。


――つくづく……、花美がこいつらに捕まんなくてよかった。


そう思った。

どうなってたかなんて、考えたくもない。

あいつの逃げ足の速さだけは、褒めてやる。

ふと……


――こうやっていつも、逃げてきたんだろ。


そんな気がした。
< 155 / 229 >

この作品をシェア

pagetop