オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
花美は、もう眉すら動かさない。

抵抗もしない。

淡々とオレを見上げてるオンナは、ただ、やたら美人なだけで、

オレが知ってる花美の姿はどこにもない……


ジワリ……


…と、汗が額を伝った。

抱きしめさえすれば、何もかもうまくいくなんて、手に入るなんて……

どうして思えたんだ?

このままキスしたところで、

こいつのポーカーフェイスさえ、崩せる気が全くしない。


――オレは……


途方に暮れる。

いままで、まともな恋愛をしてこなかったツケが、肝心なトコロで回ってきた。


花美を抱きしめているこの手を、緩めたらいいのか、

強く抱きしめたらいいのか…


――まるでわかんねぇ……


長い沈黙に、どんどん感覚が麻痺る。


「さよなら……佐々くん」

「……」


オレはなんの反応も出来ない。


何だ?これは……

リアルなのか?


花美の唇まで数センチの距離で、身動きできなくなったオレを、そっと……


とん…


花美が両手で押し離す。
< 191 / 229 >

この作品をシェア

pagetop