オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
<side 花美>

外はネオンや店の明かりなんかで、部屋の中よりずっと明るかった。

初夏の風に浮かれたのか、週末でもないのにこの人ゴミ。

それを縫うようにして、佐々くんが、私の手を引いてどんどん歩く。


――あ、あれ?


「ねえ、佐々くん!“いいよ”って…ハァッ…はあっ」

「…言ったよね!?…は、はあっ…」


だから……

あのまま、続きしちゃうのかと思ったのに……


「ねえっ!どこいくのおぉぉ~~!?」


佐々くんは聞こえてるはずなのに、無視!

振り向いてもくれない。


「ねえってば!!」


言いたいことがあるんなら言えばいいじゃん!!

それこそ、山のようにありそうな気がして、ちょっと怖いケド……

その……

私が悪いんだったら、ちゃんと謝るし…

たぶん、きっと、私が悪いから……


ねえっ

ねえってっばっ!!


――無視しないで……


不安になる。

だって、今まで付き合った人もそうだった。

『思ったのと違う』

って、そのうち、返事もしてくれなくなるの。

勝手に、私のそばからいなくなっちゃうんだ。


「…佐々…くん……」


捕まれた手首が痛くて、

でも、それよりもっと、胸が痛くって…

また、涙があふれそうになるのを、必死でこらえた。


ドンッ!

「きゃ…!」


急に佐々くんが立ち止る。

佐々くんの背中に、思いっきりぶつかる。


「…なあ、花美…、お前、家どこ?」

「……え?…おうち?」


なんで?

もう、『さよなら』なんじゃ、ないの?


「…送るわ」

「……へ?」


佐々くんってば、私の顔を見もしない。

辺りを見渡しながら、なんだか険しい顔をしてる。


「花美…おまえ、いつもどうやって家帰ってんの?」

「ぇと、…電車…かな?」

「…そぉじゃ、なくてさ…」

「……?」

「ちゃんと、家までたどり着いてんのかよ……」


よくわかんないけど、

私も佐々くんみたいに辺りを見渡してみる。

でも、

別に、変わったとこ、ないけどなあ……


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