オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
自宅のマンションは、入り口の門からちょっとした中庭みたいになってる。
薄暗いライトに照らされる木々や、草花の茂みを縫うように敷き詰められたレンガ敷きの通路の先に、建物自体の玄関がある。
その、オートロックの自動ドアの前に、私達は立っていた。
「花美、スマホ出して」
「?…う、うん」
言われるがままに差し出すと、あっという間に個人情報の交換が終わってた。
ラインも登録済み。
どうやって、やったんだろ?
私のセキュリティーって、どおなってんの?
あっけにとられて、自分の手のひらに戻されたスマホを眺めてると、
真上から佐々くんの、今日、何度目かの深いため息が聞こえてきた。
「…つくづく…危ねぇ…」
そこから、しばしのお説教タイム。
簡単に自宅バレとかありえないとか、スマホを簡単に人に触らせるなとか、なんだかいっぱい言われ過ぎて、正直あんまり覚えられません。
でも、私だって誰にでも家まで送ってもらうわけじゃないし、そこそこ人を見る目はあるつもり。
佐々くんだから…なんだけど、それを言うと、さらにお説教が長くなりそうだから黙っておいた。
佐々くんは、ひと通り私に対して苦情を言いきると、
エントランスの壁にもたれかかりながら、疲れた表情で天井を仰いだ。
「…佐々くん?」
壁にもたれかかったまま、佐々くんは姿勢は変えない。
目線だけを私のほうに動かす。
「ん…?」
低い声が、穏やかに響いた。
そおいう、返事の仕方は良くないと思う。
“甘えていいよ”
って、言われてるみたいで、オンナの子は誤解すると思うんだ。
私は深呼吸する。
気を取り直して、耳に残る佐々くんの声を振りきるように訊いた。
「あ、あのね?…その、シてくれるって、ホント?」
「……ああ、だから他のオトコに声かけんじゃねぇぞ」
「……う、うん」
佐々くんはイタズラ気に笑うと、覗き込むように顔を近づける。
鼻と鼻がこすれるほど、近くで止まる。
キスの距離……
ビクンッ!!
私の体が、金縛りのように固まる。
「なんもしねぇよ…?…まだ」
佐々くんは余裕の笑顔。