オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
からかわれてるみたいで、私はちょっとムッとする。
それなのに、佐々くんってば、ますます機嫌よさそうに笑うのだ。
私、怒ってるんだよ?
わかってる?佐々くん!
言葉にはしなかったけど、態度で伝わったみたい。
「ははっ、悪りぃ。でもさ、そんな頬ピンク色にして怖い顔したって、オトコには逆効果だよ、花美」
「……?」
「…そうだな、シてもいいけど、ただし1つ条件がある」
「条件?」
佐々くんが顔を少しだけ横にずらす。
開けた視界の先、佐々くんの肩越しに星空が広がる。
甘い声…が、体温を乗せて私の耳に届いた。
「オレのこと、好きになれよ」
のぼせ上がったキモチは、いとも簡単に思考を停止させる。
それは、まるで魔法の呪文みたい。
それとも、“呪いの言葉”なんだろうか?
「こぉいうコトは、好きなやつとしろって言ったろ?」
佐々くんが囁いた耳元から、全身を侵食するようにしびれるような感覚が広がっていく。
耳元がくすぐったい。
ゾクゾクする。
なんか、一人で反応してて、恥ずかしい。
でも、その感覚が、逆に思考を取り戻させてくれた。
そりゃそうだケド、世間一般的に、それがいいに決まってるケド……
雰囲気に流されないように、慌てて声を張り上げた。
「無理!!無理!!ぜ~ったいムリ!!私、好きな人とハジメテはしたくない!!」
――これ以上、スキになったヒトに嫌われるのはイヤ!
「オレだって、オンナなら誰だっていいわけじゃぁねえよ。オレのことが好きだって、オンナがいうからさ、抱くんじゃん?」
「ワガママ言わないでよ!」
「どっちがだよ…」
一歩も引かない。
「花美は違うだろ?“カラダだけの関係”なんていわれたらさぁ~、いくらオレでも傷つくなぁ」
ウソばっかり。
じゃあ、昼間のオンナの人たちとも告白めいたことが、あったっていうの?
そう、思ったら……
――ズキン…
あれ?
なんでだろう……?
不意に、胸が締め付けられるような気がした。
交差点でのキスシーンを思い出しそうになって、咄嗟に目を閉じる。