オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
距離が近づくにつれて、オレが見ていたことに気付くと、少しだけばつが悪そうにうつむいた。


「すげぇな、花美、助けるまでもなかったわ」

「よくあるもん。これくらい何とかできるよ?」


そう言って、キレイに笑う。

花美の本当の笑顔を知ってるから、それが作り笑いだって、わかった。

かわいそうに、せっかく楽しそうにしてたのにな。


「そろそろ、帰ろっか」

「うん」

「なに持ってんの?」

「貝殻拾った」


しゃがんで探してたのって、それかよ。

スカートのすそをベチャベチャに濡らしてまで、拾ってくるもんか?

でも、よかったなって、オレが笑うと、さっきより、ほんの少しだけうれしそうに笑い返す。

胸の奥が、熱くなる。


駅までの道のりを、2人で歩いた。

オレの背後から、花美の濡れた靴音がペタペタとついてくると、その合間に、時々メロディーが乗る。

振り向くと、両手のせた貝殻を見ながら、花美が鼻歌をうたっていた。

オレに気付かれて、真っ赤になって歌うのをやめる。

オレが歩き始めると、

手を引かなくても、オレの後をついてくる。

それが、たまらなくうれしい。

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