オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
――あ~、帰したくねぇ…
こんなこと、今まで思ったこともなかった。
もう少しそばにいたいって、オレは思うのに、花美はさっさと、帰りのあいさつだ。
「じゃあね、佐々くん。楽しかった、ありがとう」
作り笑いなんかじゃない、花美の本当の笑顔。
なんか、今日はもうそれだけでいい気分になる。
でも…
「なあ…なんか忘れてね?」
「?」
「花美から、帰りのキスとかしてくれねぇの?」
「…え!?…えと…今日は、ナシです!」
「ははっ…、今日は”って、まだ1回もしてくれてねぇっての」
まあ、さすがにオレも、いきなりそこまでは都合良すぎってわかってる。
「…じゃな」
「う…うん。またね?」
エントランスの奥に消えていく花美の後姿を見送りながら、
たがが、“またね”の言葉に、ガラにもなく胸が切なくなった。