オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
「何しに来たんだ……、あのバカ」


「何しにって…、あははっ、そりゃあ、佐々に会いに来たんじゃないの?」

「……」


言葉を失う。

こいつって…こんなキャラだったか?


「にらんだってダメだぜ?俺は見たからな」

「なにをだよっ!!」

「お前が彼女見て、一瞬笑ったの」

「!!」


こいつ~……

いちいちムカッつくヤローだなっ。

そんなコト、言われなくても、わかってんだよっ!!

黙ったまま睨み返すケド、今さらだ。


「あはははっ!!オンナに振り回されてるお前、初めてみるわ!!」

「オレだってなぁ!お前がこんなに大笑いするの、みたコトねんだよ!!」


しかも、目頭に…涙まで浮かべやがって……


「全っ然、おもしろくねぇっ!!」


そう叫んで、成久には見切りをつける。

どうとでも言え!!

すぐさま視線を花美に移した。

見ろ。
もう、人だかりができ始めてんじゃねぇか。

生徒が校門を通るたび、花美は顔を上げる。

相手の顔を、じっ…っと、その大きな目で見つめて、確認して、

そして、たぶん、オレじゃないとわかると、

軽く会釈した後、またうつむいて、壁にもたれかかる。


――オレを、待ってる。


胸の奥が、熱くなる。

花美と会ってから、時々襲ってくるこの感覚に、正直戸惑う。

ヤバぃ……

感情のコントロールがうまくいかない…


「佐々、早く行ってやったほうがいいかも……」


ふいに成久が真面目な声で言った。

淡々と見据えるその視線の先で、数人の男が花美を囲んで声をかけてる。

2年のヤツだな……

上からだと、よく見える。

少し離れた両道路にも、その連れだろう、見たことのあるヤツが、一人づつ立ってる。


――逃げ道ふさがれてんじゃねぇか。


“笑うな”って言ったろ、初めて会った夜。

知らないヤツの顔なんか、見つめて微笑むからだ。

オレは無言で教室を出て、走り出した。

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