君がいない世界で、僕はどう笑えばいいんだろう
道標
帰りのチャイムが鳴る。美月が俺に駆け寄って来た。
「玲、帰ろ!」
「うん。美月、帰りどっか寄ってかね?」
「いいよー!あ、私見たい映画あるんだ!」
「じゃあそれ見に行こう。」
平日の夕方、映画館は空いていた。
美月が見たがったのは、人気アニメの劇場版だった。
「意外だな、美月こういうの見るんだ。」
「妹が好きでね、その影響。」
「そういえば、美月の妹って今いくつ?」
「今年中学入ったよ。」
「へぇ。」
ふっとアカネのことを思い出した。
いつも着ている、俺と美月の母校のセーラー服。
ピシッとしたそれは新品感があって、アカネ自身にはまだあどけない新入生感がある。
「あ、玲ポップコーン買わないと!」
「はいはい、塩でいい?」
「ううん、キャラメル。」
「え、いつも塩なのに珍しいな。」
「今日はキャラメルがいいの!」